6月7日に開催されるDominionでは新日本プロレスの未来がかかっています。最も権威のあるタイトルであるIWGP世界ヘビー級王座を巡り、オカダ・カズチカと鷹木信悟が対戦します。
オカダは5度のIWGPヘビー級チャンピオンにして、720日間という史上最長の在位期間を誇り、まさしく偉大な選手の代名詞と言えます。オカダが勝てばIWGP世界ヘビー級王座に改称されてから初の戴冠となります。ウィル・オスプレイが怪我で王座を返上したこともあり、オカダが王座を奪還するのは理に適っていると言えるでしょう。
鷹木は新日本の新しい顔役として説得力があります。世界各国で活躍してきましたが、新日本ではNEVERオープン級王座の2回のみ。元々新日本のトップベルトを争う選手ではありませんでしたが、全ての試合に価値を与えている選手です。パンデミックのない時代であれば、メインイベントの機会を得ることはできなかっただろうが、17年のキャリアを持つ選手が、考えられなかったようなチャンスを得ることが出来る。この試合に勝てば、彼のレガシーが変わるという事を、鷹木は理解しています。
「この試合のために肉体的にも、精神的にもめちゃくちゃな努力をしてきたんだ。これは俺のキャリアの中でも、ここをモノにして、チャンピオンになるチャンスなんだ」
Dominionは従来、6月6日に開催されていましたが、緊急事態宣言により6月7日に開催されます。1月に開催されるWrestle Kingdom16に向けて、チャンピオンが半年間タイトルを保持するというのが、新日本にとってのベストシナリオだと言えます。しかし、オカダはコロナからの戦いから回復し、パフォーマンスにどのような影響を与えるか未知数と言えます。その状況でオカダがその役割を果たすことができるか分からない中、会社が鷹木をチャンピオンとして全面的に信頼したいと思うかどうかはまだ分からない。
2021年は鷹木にとって多忙な年でした。37歳の鷹木は新日本で世界的な商品となりました。ドラゴンゲートを筆頭に世界各地で地位を確立した後、2018年10月に新日本に参戦、彼はすぐに不可欠な選手となり、ロスインゴベルナブレスデハポンに加わりました。その数ヶ月後、彼の暴力的なフィジカル・ブランドはベスト・オブ・スーパージュニアで9連勝、決勝でウィル・オスプレイに敗れるまで、信じられないような強さを見せつけました。トーナメントの決勝戦は、スリリングで手に汗握る一進一退の攻防が繰り広げられるプロレスの真骨頂であり、鷹木が新日本の正統な存在としての地位を確立するきっかけとなりました。
「あの試合は、俺という人間を印象づける試合になったよな。武道館での初めてのメインイベント、新日本での活躍を見せるチャンスだった。あの試合では、俺の強い意志ってのをよ、見せつけたけど、同じものをドミニオンでも示さなきゃいけないよな」
彼の特徴はそのファイティング・スピリットにあります。リングに上がる旅に揺るぎない強さを発揮し、ユニークで魅力的なスタイルを生み出しています。
ベスト・オブ・スーパージュニアの決勝戦で敗れ、NEVERのベルトも棚橋に奪われ、オスプレイとの王座戦にも敗れるなど、重要な試合を敗れたにも関わらず、鷹木の人気は衰えていません。WWEなど他団体のタイトルは有名ですが、IWGPと刻まれたタイトル程素晴らしいプロレスのタイトルはありません。鷹木のタイトル獲得は昨年の夏、EVILが48日間のタイトル保持に失敗した事で、未だに不満を抱いているファンを喜ばせると同時に、業界における彼の地位を永遠に正統化することになります。
「チャンピオンになることに集中してるんだ。正直、俺は少し劣等感がある。ヘビー級としては体が小さいからな、他のヘビー級の選手とは違う存在にならなきゃいけないんだ。俺は体がゴツくて体格はいいのに、もっと早く動けるようにしなきゃいけない。俺には機動力が必要なんだ。今回の試合に向けて、オスプレイとの試合の後の気持ちを考えてみた。あと一歩のところで勝てなかったのは悔しかった。長い時間をかけてここまで来たんだ、今がそのチャンスなんだよ。」
身長180cmの鷹木は,最初、身長をより高く見せるためにトレードマークのモヒカンヘアにしていたことを明かしました。
「身長を伸ばそうとしたけど、成長が止まったんだ。プロレスラーになるためには、180cmは必要だと思ってた。だから、モヒカンにして、大きくしてるんだ。。まぁ、それは全部、俺の旅の一部だな。俺は新日本に辿り着くまでに長い道程があった。俺にとっては、これは単なる1試合以上の意味があるんだ。俺はこの仕事をはじめて17年になるけど、プロレスを好きになった14の頃から、これは俺のためにあると思ってたんだ。プロレスを見て、「これが男のやるべきことだ」と思った事を今でも覚えてるよ。学校の先生に、新日本や全日本、FMWに行くと言っていたくらいなんだ。その後、アニマル浜口ジムに入った。今、オカダを相手に自分の正体を証明するチャンスなんだ。」
鷹木とオカダは一見すると、正反対のタイプですが、新日本への道程には共通点があります。オカダはウルティモ・ドラゴンが主催するプロレス学校「闘龍門」で昔ながらのプロレスの教えを受けました。2004年、その理念を受け継いだドラゴンゲートが設立され、鷹木はそこで同じ理念を学んでいるのです。
「俺達は、同じ闘龍門グループの出身で、それはいつまでも変わらない。だけど、いくつかの違いはある。俺は高校を卒業して、アニマル浜口ジムで修行して、ドラゴンゲートに入った。オカダは俺がドラゴンゲートに入った直後にメキシコに渡り、ウルティモ・ドラゴンに教えてもらったんだ。俺の主な先生は天龍さんだったからな。俺達は似たようなトレーニングをしているがスタイルは違う。オカダのスタイルはメキシコの影響を受けてるが、俺のファイトスタイルはそうじゃない。2人ともドラゴンスタイルを持っているけど、その方法は全く違うんだ。」
ドミニオンのメインイベントでは、そのような哲学の衝突が見られます。鷹木は92年全日本での三沢光晴 vs スタン・ハンセンの三冠達成を見て最も意味のある試合の一つだと語りました。
「あの試合が俺にとっての特別な試合だな、肉体的な限界を超える方法を教えてくれたんだ。今でもその言葉は俺の信条になってるよ………体よりも心。日本では、メンタル、テクニック、ボディの3つが優先される。技術はめちゃめちゃ重要、精神的にも強くなきゃいけない。だけど、この3つの要素の中で、俺にとってはメンタルがめちゃめちゃ重要なんだ。オカダとの試合はチェスみたいなもんだ。」
新日本のメインイベントでのオカダとの対戦以上に、業界で大きな舞台はないですし、鷹木の新日本での初の世界タイトル挑戦に火をつけるのは絶好のタイミングだと思います。ある意味では、業界は鷹木の勝利を必要しています。彼が勝利する事で、新日本のトップになるためには別の道を歩む事もかのうであることを示し、彼がチャンピオンになることで非常に魅力的な風景を作り出す事ができます。
鷹木はリングの中ではマシンのようであり、彼の成長は自然で有機的なものだと感じています。彼自身の歴史は新日本スタイルの多くを含んでいます。リング上で、ハードヒット、ハードワークを誰よりも行っています。オカダのレインメーカーに対し、鷹木のパンピングボンバーを見る事が出来るチャンスでもあります。
「俺のはロープと体全体を使うからな、俺のパンピングボンバーはレインメーカーよりも強力だよ。オカダは何度も味わうことになるだろうな。」
2021年前半、鷹木にとって輝かしい試合の連続でした。今、彼のキャリアの中でも、大阪城ホールで栄冠を手にするチャンスが与えられています。
「崖に手がかかっている状態だけど、オカダに勝って初めて頂上に登れるんだ。これは必勝だ。負けたら俺自身がどうなるか分からない。もしかしたら、もうタイトルマッチはできないかもしれないし、G1にも出れなくなるかもしれない。俺には運が必要で、ずっと祈ってきたんだ。これは新日本のトップになるためのチャンスなんだ」
Sports Illustrated
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