コロナが起こした地殻変動、女子プロレスAssembleは一体何を生むのか
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ここ1週間、様々な団体公式からすごい事が起こると煽っていた話のベールがついに明かされた。Women’s Pro-Wrestling Assembleとして各団体が協力、10月1日に興行を行うことが発表された。
やはり特筆すべきは、その参加団体の数となによりも北斗晶がその名前を連ねたことにある。
【コロナの影響】
当然、この話は様々な状況の積み重ねが生んだ事は言わずもがなである。おそらく発端はスターダムのブシロード入りにより生まれた長与の宣戦布告にあると思うのだが、コロナによるパンデミックの拡大によって世界的な情勢の変化が巻き起こった。
おそらく同じようなコンセプトの大会、スターダムだけではなくて、女子プロレスには様々な選手がいることを自分の知名度を使ってもっと大きく知らしめようとしていたのだろうとは思うのだが、目的を大きく変えることになった。
選手も、ファンも顔を合わせる事が出来ない環境の中で、多くの団体や選手がインターネットを使った繋がりを深め、OGなども参加したZOOM配信など自分達の持つ影響力を利用して、より多くの人達に楽しんでもらう、という精神が垣間見えた。
特に感じていたのは、旧ジャパン女子の選手達の繋がりである。今はOZ、WAVE、PURE-Jと分かれているものの、それぞれのトップは旧ジャパン女子の先輩、後輩。なかなかリングでの絡みはないものの、顔を合わせれば普段と違う雰囲気になるのを見せてくれた。
元々、配信や企画力に定評のあるGAMIの絶妙な立ち回りも見事だったが、尾崎がこのタイミングでグッズ紹介の配信をしたり、今出来る最大限のことをやった姿勢は、特筆すべきであった。
最初、この話題が出た時にOZが名前を連ねていることに違和感があった。女子プロレスの歴史の中でもOZというのはかなり特殊な立ち位置に存在していて、尾崎率いる正危軍が実権を握るという逆転的なプロレスをしている団体なわけで、個が確立された世界である。
それを超えて参加を表明したのは、このコロナの状況によって今出来る最大限のこととは何か、何をファンが求めているかを察知した成果なのではないだろうか。
【長与が旗を振る、ということ】
近年のプロレスファンは長与千種という現象を垣間みる事は多くはないのかもしれない。クラッシュ・ギャルズは社会現象だった、というのは言葉では分かりやすいが、その影響力が伝わりにくいだろう。しかし、今回名を連ねる団体の数々を見て、それを感じてほしいのだ。
全女崩壊以後、女子プロレスは離合集散を繰り返して来た。プロモーションはどんどん規模を小さくしながら、全女でかつてトップを張っていた選手の数だけ増えたと言っても過言ではない。仕方が無い、自我の塊みたいな人達の集まりなのだから手を取り合ってなど出来るわけがない。
だが、彼女達の多くは、あの時代、クラッシュ・ギャルズに憧れて全女に来た人間なのだ。10代の女の子がカリスマのように思った人が、この瞬間に自分のためだけでなく、業界のため、世界のために動くと宣言すれば、これだけの力が集まるのである。
その最大値が北斗晶という存在だろう。言うまでもなく、北斗もまた一時代を築いたプロレスラーである。全女を離れて以降で考えると、北斗が女子プロレスに触れる瞬間はいつだって長与の姿があった。北斗もまた長与に憧れてこの業界に足を踏み入れた人間である。
Assembleの発表があった夜、長与が行ったインスタライブに北斗が出演。2人でリング消毒しましょう、全女の時みたいに焼きそば焼きましょう、と話し、長与をチコさん、チコさんと呼ぶ姿は、ZOOMで尾崎に対し、どこかフランクでありながらも先輩、後輩を感じさせるGAMIやコマンド・ボリショイの姿に重なる。どれだけ時代が経とうが、変わらないものが存在するのだ。
これはスターダムがここに名前を連ねた理由にもなる。最初の構想時、スターダムに対し敵対するのではなく横に並ぶ、ということを繰り返し告げていた。ビジネス的なことや同じブシロード傘下である新日本プロレスの姿勢を見れば、他団体との絡みというのは難しいのではないか、というのが大方の予想ではあったのだが、おそらくはこの期間に発生した事態が影響しているだろう。
その中で、ロッシー小川を小川君と呼び続ける長与が旗を振れば、大きく事が動いた、と言える。
【世界の女子プロレスの環境】
このブログでは度々、世界的な女子プロレスの動きを踏まえてきたが、この1年で大きく変化してきた部分がある。
1つは、AEWの存在だ。ケニー・オメガとブランディ・ローデスが主となり、女子部門を担当していることは多く知られていることだが、未だ知られていない女子プロレスの独創的な部分を知らしめることに注力してきた。
高い運動能力とそれまで作り上げて来たThe Eliteのストーリー性を持った男子に比べると、インディー出身者やビッグマッチ、TVマッチの経験が少ない選手が多い女子は序盤に苦労したと言える。
その中で、東京女子プロレスの選手や里歩、さくらえみ、志田光などケニーが信頼を置く日本人選手を配置することで、世界観を広げて来た。
今年に入り、女子だけのタッグトーナメントが開催されたが、これはAEWのTV放送の最初のシーズンで行われた男子のタッグトーナメントを女子で行うという試みであると同時に、AEWの女子部門の新たな境地を見せた。
AEWはタッグプロレスの面白さをより世界に見せようとしており、ヤングバックスやFTRといったタッグの名手が勢揃いしている。女子タッグトーナメントでは、同じ色のクジを引いた選手同士がタッグを組むというギミックを取り入れながらも、チームカラーが色濃く出たタッグを多く排出した。また、WWEやIMPACT、AAAを経由した選手が入って来たことで、非常に高いレベルのレスリングが展開されているのは特徴的である。
一方、盟主WWEでも女子の戦いは激化している。ご存知の通り、ASUKAはまさしく第一線で王座の奪い合いを展開。NXTでもイオが王座を防衛し、戦いの真っ直中に存在している。
パフォーマンスセンターが出来たことにより、女子選手にも基礎的なレスリングがきっちりと叩き込まれた上で、WWEの持つ圧倒的な人材収集能力によって、類い稀なるセンスや身体能力を持った選手を排出し続けている。
度々、日本人選手がゲストコーチとして呼ばれており、里村も足を運んでいる。これもコーチとして誰が適任か、非常に高いリサーチ能力によって選ばれているのは、ケンドー・カシンの名前が上がったことからも分かる。
日本国内だけを見ていると、WWEのレスリングが伝わらない部分があるが、現在のWWEのレスリングの密度は非常に高い。指導している層が世界でトップのテクニシャン揃いなわけだから、当然レベルは高くなるのだ。
この2団体に加え、IMPACTも数度のモデルチェンジを繰り返しながら、WWEを離脱した選手が合流し、大きな波を生み出している。特にノックアウトと呼ばれる女子部門は非常に個性豊かな選手が多く、昨年はテッサ・ブランチャードが部門の枠を超えて、王座を奪取するなど話題も呼んだ。北米はこれらの団体が入り乱れながら、選手の確保合戦に発展しており、その手はNXT UKなどの試みなどヨーロッパにまで手が及んでいる。
いずれ、この流れの影響を受けるのはメキシコだろう。メキシコは古くからルチャドーラ、女性選手がいて、混合マッチなども行っている。日本にも多くの選手がやってきたし、日本からも多くの選手がメキシコで試合を行って来た。
WWEはこの数年、メキシカン、プエルトリカンの選手を起用し、より多くの人種に影響を与えようとしているのは明白だが、女子選手はまだその流れが来ていない。IMPACTはAAAとの提携があるため、合同興行の際に参戦したりなどもある。もし、これで女子選手まで確保するような展開が生まれてくると、当然日本のマットにも関連してくることになるはずだ。
日本自身もその波の中にいないわけではない。世界的な情勢によりまだ渡れていないものの、SareeeがWWE入りが決まっているし、おそらくNXT JAPANがお蔵入りになることはない。そうなれば、より直接的に選手の起用が出来ることとなる。
【Assembleが世界に見せるもの】
これらの世界的な流れに一つ欠けるものがあるとすれば、それは歴史の重みである。
お金や人材はいくら積み上げられたとしても、歴史というものは一朝一夕ではどうにもならない。Assembleが見せるのはまさしく日本の女子プロレスの歴史と言えるのではないか。
10月1日については各団体の提供試合ということで発表となっているものの、新人は他団体の相手を気にするだろうし、現役のトップ選手もありえない顔ぶれがいずれ生まれるかもしれない。
例えば、カイリ・セインの行方は世界が注目するカードの1つだが、もしこのタイミングでAssembleが仕掛けて来たら、これだけでも世界が震撼するような事態になりうる。
TwitterのTLで見るように、これはただの寄せ集めの合同興行にしかならないかもしれないし、世界的な女子プロレスの盛り上がりを飛び越えるような事件になるかもしれないのである。
最後に、個人的に望むのは、色んなしがらみがあるのかもしれないがディアナの名前が無いのはちょっと心残りである。この半年ぐらいの流れで見ても、伊藤がカタいわけでもないのだろうから、この大会でイトナベが揃うのは見たい……
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