▼"全日"にこだわったメインカード
11.15 ザ・デストロイヤー メモリアルナイトと称して、今年3月に亡くなった
ザ・デストロイヤーに捧げる興行が開催された。週刊プロレスに対し、大会プロデューサーとなった和田京平名誉レフェリーはカード編成やゲストに総統な苦労をしたと語ったが、中でもメインをどうするかには頭を悩ませたらしい。
当時を知る日本人レスラーは多くが亡くなっていたり、外国人レスラーは訪日が難しいなど様々な問題が重なった。そこで考えついたのが、"全日"にこだわったカードだったという。
現三冠王者にして、プロレス大賞MVPの呼び名も高い宮原健斗、現W-1オーナーの武藤敬司、そこに並び立つのは、世界の獣神サンダーライガー。
反対コーナーには、武藤全日でデビューしたSANADA、BUSHI、KAIの同期3人。
武藤と教え子が直接的に接触するのもあまり見る光景ではないし、今の宮原と今のSANADAが触れることだってありえない話だ。
▼武藤とSANADAの関係
SANADAが武藤が社長を務めていた頃の全日本でデビューしたという話は皆が知っているところだとは思うが、新日本の実況、解説ではその頃の話を細かく解説されることがない。
順風満帆な道程とは言えなかったが、SANADAが武藤から期待されていたのは確かだ。なかなか飛び抜ける機会を見つけられず、KAIと団体のエースを巡ってバチバチとやりながらもNWA・TNAへの修行の機会を得て、師匠の匂いを感じるペイントレスラーになったこともあった。
W-1へ移った後、アメリカから戻ってきたSANADAへW-1ではなくフリーへの道を選択した。当時、武藤はSANADAをエースとして押し出すつもりだったと悔しそうに語っている。
その後、新日本に現れたSANADAは一言も発すること無くロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの一員として動き、この数年シングルでの評価を格段に上げ、オカダ・カズチカからライバルとの言葉を引き出すまでになった。
SANADAのこの姿勢というのが、非常に師匠である武藤と同じ匂いがする。高木三四郎の書籍でもサイバーエージェントグループになった時に、武藤だけが「いくらで売ったんだ?」と率直に金の話をしてきたと語っていたが、武藤にとってレスリングはビジネスであるというのは1つの軸になっている。どう評価され、どう団体に利益を生み出すか、SANADAもインタビューなどで己の価値をどう演出するかこだわりの強さを見せることがある。
この2人はよく似ているのである。
▼SANADAと宮原の関係
新日本を中心に見ていると宮原健斗というレスラーに触れる機会はあまりない。確かにあらゆる事業規模で言えば、新日本は急成長を遂げたわけだが、後楽園ホールの動員数に限って言えば、今、宮原ほど後楽園を埋めれるレスラーはいない。
特に全日本は日本人選手であっても、体の大きな選手が非常に揃っている。諏訪魔もそうだし、石川修司もそうだ。その中で宮原も186cmという大柄で、非常に優れた勝負を繰り広げる。
レスラーとしての出身は健介オフィスであり、現在NOAHの中嶋勝彦は先輩に当たる。そして、デビュー戦の相手がSANADAだったのだ。
今や新日のトップの1人になったSANADAと、絶対的な三冠王者になった宮原の遭遇というのは一体、どんな攻防になるのか注目を集めた。
▼宮原滾る、注目の一戦
レジェンド2人を前にしても、健斗コールを煽る宮原。ロスインゴであるSANADAとBUSHIに無視され続けるKAI。期待通り。
頭から武藤がSANADAと向かい合うなど刺激的な攻防が見られるが、SANADAと宮原が顔を合わせたのは10分過ぎ。低空のドロップキックから屈んだSANADAの顔面へもう一発。リング中央でさらに健斗コールを煽る。しかし、SANADAもリープフロッグの連続から突き刺すようなドロップキック。解説の小橋も思わず唸る。
エルボーの打ち合いで互いに意地の張り合いを見せるも、SANADAのエルボースマッシュから強烈なバックドロップ。ここでKAIにようやくまともなタッチ。
両軍、分断する展開からKAIがSANADAを呼び込むもスプリングボード式ドロップキックは誤爆。武藤を転がしたSANADAはパラダイスロックを狙うも武藤はこれを回避。KAIはBUSHIを呼び込むも、BUSHIの毒霧も誤爆。そこへライガーの掌底、宮原のブラックアウト、強烈な膝、さらにシャイニングウィザードとフルコースを浴びるもこれをカウント2で返す。
武藤がKAIにがっちり足4の字に入ると、ライガー、宮原もこれに続く。KAIが溜まらずタップし、試合終了。最後は宮原がご機嫌なマイクパフォーマンスで締めてみせた。
棚橋との遭遇でも強烈なインパクトを残した宮原だったが、SANADAを前にしてもそれは変わらず。それどころか全日のお客さんが多かったのか、SANADAへの声援よりも健斗コールの方が多く感じるほどだった。あくまでも独自のリングを貫く新日本の姿勢というのは重要だが、国内の業界の発展として見ると、その波及効果はまだまだ足りていないのかもしれない。
東スポのプロレス大賞がもし、宮原に決まることがあれば、それは新日本にとっても大きな話になるだろう。
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