このツイートが反響をいただいていたので、少し広げて書きたい。この話の発端は、TAKAみちのくが新たに立ち上げたJUST TAP OUTのrhythmが練習生に戻るか否か、という話題に始まる。旗揚げ以来、成績を残せていない彼女に対して突きつけられたプロから練習生に戻るという選択。昨日のプロレスリングマジックボックス旗揚げ戦で、Sareeeらディアナ組と当たり、彼女が3カウントを奪われることとなった。
彼女は自ら代表に練習生に戻る、ということを告げたようだが、プロのプロレスラーがここで練習生に戻るということの是非が、自分の中でグルグルと巡っている。
▼プロレスの虚実
SNSの一般化により、プロレスの虚実の境目が分かりにくくなってきたというのは、皆が感じているところだと思う。それが現実的な問題を抱えた話なのか、それともストーリーラインによるものなのか。
アイスリボンを離脱したジュリアの件や昨日書いたアンドラス宮城のこともSNSが絡んだ話と捉えることが出来る。なにより自分は、その虚実こそがこのプロレスというアートの本質だと思っている。良かれ悪かれ、何が面白いのかと言われたらこの部分だ。
日本では、比較的、実に則した見せ方というのが重視されてきた。いわばやらせか否かという古くからある問答の一部分だ。そこから少し離れて、虚の部分を見る。虚というのは演出的な視点である。
プロレスラーとは何なのか、アスリートなのか表現者なのか演者なのか。
その答え自体は本人、観客それぞれの中にあるから、正解というものはない。
だからこそ、どうやって見せるのか、どうあるべきかというものが問われてると言える。
▼言葉の重みを知る
JTOの選手を見ていると、言葉の軽さが目立つ。それが代表の演出なのか、自分達で考えるべきこととして提示されているものなのかは計りかねるが、"プロ"のプロレスラーという定義で考えた時にどうか?という目で見ると、軽い。
この数時間前、会場に向かう間、代表は和気あいあいとする車内にギャップを感じているとツイートしている。とすると、”JTOの看板背負っていたのに”という言葉は、本当にそこまで根詰めていた結果と思えるだろうか。
普通のファンならここで「そんなことないよ!頑張ろう!」と言うので、あえてそのギャップを表に出してきた代表が諸々のツイートを演出してるとは思い難い。
SNSのせいでこういう些細な部分の言動の一致まで虚に影響を与えていく世界に生きているのだ。
かっこいい言葉、体裁のいい言葉は見栄えはいいが、中身がない。
▼練習生に戻る意味
分かりやすくいえば、プロレスラーに必要なものというのは"物語"だ。その中で見せる感情に人は突き動かされ、応援をする。そういう意味で見ると、"プロとは言い切れない"というのはどういう状況だろうか。
勝つこと、強いことだけがプロのレスラーの全ての価値だろうか。勝てなければプロの資格がないのだとすれば、物語は敗北を迎えた時点で終了となる。そうではなくて、どう立ち向かっていくか、勝ちを掴みに行くかを見せるのがプロなのではないか。
rhythmは現役女子高生であり、幼少期は喘息で悩まされ、大きくなった後も子宮系の症状に悩まされているという。そういう自分の、どういう姿が人に感動を与えるのかを考えるべきではないか。
練習生への降格を言い渡されたとしても、プロレスラーであることを諦めずに食いつくのだって、プロであることへのこだわりと自分なりの感情の発露と言える。求められるのは、それを貫くために何をしなければいけないかを見せることだ。
練習生に降格したとしても、そこからまた戻る、というストーリーもある。だが、諦めずに食いつく、という選択肢は彼女の中にあったのだろうか。そこを問いたいのだ。
▼プロレスとは人生である
プロレスというのはどうやったって、その人の人生が滲む、人となりが滲む。ここで練習生に戻ることを選んだのは、彼女自身の謙虚さの現れかもしれない。
横に立つ中で言えば、舞華は強さでそれを見せていくタイプのレスラーだと思う。だが、人と違うことこそが魅力になるということを理解しているだろうか。
例えば、真琴なんてデビューした時には、走るのも危ういような怪しい人間だった。そもそも人なのかどうかすら怪しかった。それでもマイペースに業界の脇道を歩き続けていて、人々はその姿を追い続けている。
Tajiriのブログに
サイコロジーの話が出てくる。「左腕を主人公にした一話のストーリー」このサイコロジーという言葉は、代表の盟友であるFunakiからも語られる大事なメンタリティだ。
誰もが自分の人生を歩んでいる。その人生こそが物語であり、物語をプロレスにしていくのがプロレスラーである。たった1試合の左腕を攻める過程が物語であるように、自らの人生もまたプロレスとなる。
彼女のプロレスが今後、どのように進むのかが楽しみである。
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