お久しぶりです。色々と環境を変えていたために時間は開いてしまいましたが、AEWだけはちゃんと見ていました。
さ
て、この一ヶ月、AEWのテレビ放送では初代AEW女子王座戦に始まり、タッグ王者を決めるためのトーナメントを中心に構成されてきた。
プライベートパー
ティーがヤングバックスを破るジャイアントキリングに始まり、ルチャ・ブラザーズがSCUを襲撃、メンバーの1人であるスコーピオ・スカイが代わりに出場
するなど、話題性も高かった。
決勝戦に進んだのは因縁深いSCUとルチャ・ブラザーズ。AAA出身の実の兄弟
タッグにして、今や北米も手中に収めるダークヒーロー
ペンタゴンJrとレイ・フェニックスは、ダーティーなテクニックも見せるが華麗な技の数々も魅力的で、それを裏付けるのが試合開始直後に起きたSCUとル
チャ・ブラザーズを交互に呼ぶチャント合戦ではないだろうか。
AEWに対して、金の掛かったインディーの集まりと見る人々もいるが、むしろアメリカインディーで起きている最新のレスリングというものが、どんなものなのかを提示している、と言える。特にそれが顕著になったのが、このタッグ戦線だ。
AEW
旗揚げの時点で、The
ELITEの面々はプロレスにおけるタッグの面白さをもっと伝えなきゃいけないということを話していた。それはケニーにとってもかつてのゴールデン☆ラ
ヴァーズとしてタッグで一世風靡し、ヤングバックスにとっても自身が世界一のタッグ屋である自負があった。
加えて、彼等が肌を合わせてきたアメリカインディーにはこんなにもたくさんの才能があるんだということを、彼等は示したかったのだということが分かる。プライ
ベートパーティーはまさしくその象徴といえるだろう。卓越した身体能力とそこなしの明るさはヤングバックスのそれとはまた違う。
そういう意味で、決勝に残ったこの2組というのは、今、AEWが見せるタッグの試合で最高の組み合わせと言えるだろう。フランキー・カザリアン、スコーピ
オ・スカイ共に新日本プロレスでもお馴染みでベテランの域に近付きつつある職人達だ。試合は非常にスリリングで、ルチャ・ブラザーズの織りなす空中戦を織
りまぜた展開も二人の柔軟なレスリングが噛み合ってみせた。
だからこそ、最後の一瞬が印象的だったのだ。いつも
ならルチャ・ブラザーズが合体攻撃から畳み掛けるような流れに入るところ。一ヶ月に渡って、そのシーンを繰り替えし見たであろう観客も分かっていたはず
だ。しかし、スカイがペンタゴンJr.をくるんと丸め込むと、そのまま3カウント。
驚きを隠せない観客、レフェリーに詰め寄るペンタゴンJr.、そして少しずつSCUがベルトを穫った喜びが客席へと広がっていく。
プロレスは3カウントを奪った人間が勝つ、というのは基本的なルールだ。しかし、いつしか派手なフィニッシャーばかりが重要視されるようになって、皆が基本を忘れるようになった。観客も、選手も。
スカイは新日本プロレスのロス道場で柴田と共に若い選手のコーチをする手伝いをしていたこともあるし、身体能力と跳躍力を活かした空中戦も出来るが、その実、クラシカルなレスリングにも精通している。
だから、丸め込みが火を噴いた。
超人的な空中技、合体技、危険なアイテムのようなワードがアメリカインディー出身のレスラーと結びついて、ネガティブに語られてきたAEWだが、この一瞬でAEWが持つ本当の多様性というものを提示したのである。
新日本プロレスを追っている人達、今、WWEを見ている多くの選手が00年代のROHやPWG、黎明期のTNAを支えた選手を見ていることであろう。SCU
のクリストファー・ダニエルズもそうだし、AJスタイルズ、サモア・ジョー、サミ・ゼイン,アレックス・シェリー、クリス・セイビン………この世代の話
だ。
彼等は確かに体のサイズは小さいかもしれないが、レスリングへの情熱は確かで、90年代新日ジュニア、Uインター、全女対抗戦のような小さな島国の、TVで流れてくるWWFの試合とは全く違うプロレスに強い憧れを抱いていた。
同時に、その知識欲は日本のプロレスの源流とも言えるキャッチ・アズ・キャッチ・キャンに向かったり、同時期にメキシコからプロレスを教えに来たスカイデによりルチャムーブや複雑なジャベが持たらされ、彼等のレスリングを誰も見たことのない形に進化させていった。
その終着点の1つが、この一戦だ。これからのレスリングの在り方を考えた時に、3カウントを奪うということを再考すべき時が来たのだ。
【怒れるモクスリー、イカれるモクスリー】
先週の放送の後、オーナーであるトニー・カーンに呼び出され、試合は良かったが、バイオレンス過ぎると口を出されたモクスリーはそのままバックステージでトニーと口論。カメラを見つけるや手で払いのけるなど荒れた様子を見せた。
今週の放送では、中盤、リングを占有していた相手をダーディティーズで一掃するや、マイクを握り、自分がどれだけイカれていて、レスリングが暴力的で美しいかをまくしたてると、観客は怒号のような反応を見せた。
ト
ニーの指摘は事実ではなく、それに抗うモクスリーという演出だ。しかし、それ以上にモクスリーのプロモーション力が爆発した。元々マイクのうまい選手だ
し、WWEのトップ選手というのは当然マイクが出来なければいけない。だが、モクスリーがWWEを離れた理由の1つに、喋る言葉を制限されてきたという理
由があると本人も語る。
AEWでマイクを握った彼は、自らのパッションを一気に爆発させたのだ。それは彼のレスリングスタイルにも似ていて、その言葉が彼自身の言葉であり、彼の感情の中から生まれた言葉であると強く感じさせた。
作られたキャラクターではなく、ジョン・モクスリーの内なる感情から全てが生まれているのである。
11.10 PPV「FULL GEAR」では、AEW最初のPPVから小競り合いを続けてきたケニーとついにハードコアマッチを迎える。危険を顧みない野獣2人がどんなレスリングを見せるのか。
【若きエースは新たな時代を進む】
第一試合でハングマン・ペイジはサミ・ゲバラと対戦。ペイジはThe ELITE、ゲバラはジェリコ率いる悪の集団インナーサークルの中でもキャリアの若い選手同士の対戦である。
ゲバラは持ち前の身体能力でペイジを翻弄するものの、ペイジもパワーと機動力でそれを切り返してみせる。勝機を見逃さなかったペイジががっちりと勝ちを掴んでみせた。
ペイジはPPVでかつて敗北を喫しているPACとの対戦を表明している。
【危険極まりないラテンアメリカのタッグ屋】
タッ
グトーナメント決勝戦ともあり、伝説のタッグ屋ロックンロールエクスプレスの2人が呼び込まれるも、なんとLAXことPROUD-N-POWERFULが
これを襲撃!すっかり年老いた老人に殴る蹴るの暴行を加えたばかりか、入場口の下にあるコンテナに向かってパワーボム!客席もあまりの凄惨さに悲鳴が起
こった。飛び出して来たヤングバックスが追い払うも、悲劇は続く。
ケニーとヤングバックスは6メンタッ
グに出場。衝撃が起こったのは試合後、勝利し観客と分かち合う中、仮装した客が掴んだ手を離さない!なんとその正体はPROUD-N-POWERFULの
二人!客席に引きずり込むとヤングバックスをボコボコに蹴り飛ばし、去っていったのである。PPVで対戦するこの二組の行方も目が離せない。
【ついに登場、新たな日本人選手、志田光】
AEW専属契約をした日本人選手であり、ケニーが日本の女子プロレスをそのまま見せていく主軸に置いたのが志田光である。
女
優としてキャリアを進む中で、アイスリボンと出会い、プロレスラーになった志田は以後、フリーランスとしてOZやWAVEで様々な強敵とぶつかってきた。
その多彩な遍歴は日本で行った自主興行が東京と大阪の二カ所で開催され、2日間で計7試合を戦ったということからも、彼女が日本の女子プロレスにどれだけ
影響力があるかが分かる。
柔道と剣道に勤しみ、アスリートとして優れた身体性を持つと同時に、アジャを始めとする強大な先輩、何故か曲者だが試合巧者である乱丸、広田という団体も異なる先輩方には可愛がられ、様々なエッセンスを吸収したレスラーは志田以外にはいない、と言える。
対戦相手のシャナはEVE出身でスターダムにも参戦、イオとも重要な試合を戦って来た選手だが、志田を前にはスポットを奪えなかったという印象を覚える程に、志田の実力が見えた一戦となった。
志田はケニーと付き合ってるという話もあり、いよいよアメリカでの生活が始動した。里歩もそうだったように、彼女の人となりが伝われば、よりファンを掴んでいくことになるだろう。
【ジェリコvsCody、追い詰めるインナーサークル】
様々な場面でCodyとジェリコはぶつかり合い、PPVでAEW王座戦を控えている状況だったが、この日、調印式が行われた。
プ
ライベートジェットで兄であるダスティン・ローデスと共に現れたCodyは別々のリムジンに乗り込み、会場へと向かった。そして、ジェリコとの調印式を終
えたところで、タイタントロンに映ったのはダスティンを襲撃したゲバラとジェイク・グェイガー!なんとPNPがヤングバックスを襲撃しただけでなく、
Codyに対してもダスティンを襲うという方法で揺さぶりをかけてきたのである。
The ELITEと対立を深めるインナーサークル、PPVでこの両ユニットの戦争は免れない状況となった………
ケニーはこの後、11.3のDDTで里歩とタッグを組んでの試合に臨む。久しぶりの日本での試合、さらにもう1つの故郷というDDTでの試合に際し、ケニー自身もかつてその場を明け渡した今のエース竹下達がどんな試合を見せてくれるか楽しみにしていると告げている。
しかも、この大会、AbemaTVで完全生中継されるのだ。それに伴い、DDTがどんな団体なのかを紹介したVTRが作られたので、もしDDT見たことがないという方はチェックしてほしい。
この映像の中に紹介されている一戦、ケニーとエル・ジェネリコのタイトルマッチだが、エル・ジェネリコの正体といえば、今はWWEのトップ選手であるあの男だ。実はDDTで、運命的なすれ違いが起こっていたといえる。
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